野田秀樹 率いるNODA•MAPの劇「兎、波を走る」を観てきました。世界が交わって言葉が飛び交うすごい舞台でした。
出演は、高橋一生、松たか子、多部未華子、秋山菜津子、大倉孝二など。
会場は、池袋の東京芸術劇場 プレイハウス 。
チケットがなかなか取れなくて諦めかけたのですが、運良くチケットトレードが当たって観に行くことができました。この日も当日券のために長蛇の列ができていました。野田秀樹の新作でこの出演者だと人気になるのもうなずけます。
以下、ネタバレも含みますのでご注意下さい。
高橋一生演じる兎と、娘、アリスを探す松たか子演じる母親を軸に劇は展開します。 アリスを演じるのが多部未華子です。この兎は、「不思議の国のアリス」の時計をもってアリスの前を駆け抜けて穴に入り、不思議の国へ誘導する兎がモチーフになっています。そしてタイトルにあるように兎は、波を走り、舞台を駆け巡ります。
“潰れかかった遊園地”からお話はスタートしますが、兎が入り込む穴やら、DNAを模したと思われる螺旋階段、波などの舞台が交錯し、ここはどこなのか、時間はいつなのか、分からなくなります。また劇中劇の構成になっていていくつもの話が重なりあいます。
舞台の仕掛けも、大きな舞台装置があるわけではないのですが巧みでした。四角い皺だらけの紙のようなものが移動して役者が入れ替わったり、実在の人とディプレイに映し出される人が重なったり、波や境界を表すような複数の動くロープなど、ここでもいろんなものが重なり合います。
言葉遊びも面白いです。
「妄想するしかない国」→「もう、そうするしかない国」
「穴でやる言葉の並び替え」→「アナグラム」
「兎→ USAGI」→「USA GI」(USAのGI(兵士))
「自業自得」→「ウジの地獄」
「体温 38度の線」→おそらく 朝鮮の38度の国境線と新型コロナの検温との引っかけ
他にもいろいろありました。野田さんのこのような言葉を紡ぐ才能ってすごいですね。
また「不思議の国のアリス」、「ピーターパン」、チェーホフの作品など、多くの作品が要素として絡まっていきます。
そして時事として、60年代の学生運動、北朝鮮の拉致などの歴史的なことや、現在進行しているVR, メタバース, AI, 仮想通貨なども散りばめられます。
何なんでしょうね、この重なり合う不思議な世界は? そして母親 松たか子は娘アリスを見つけられるのか? 実は松たか子自身がアリスなのでは? そうとも思われます。 不思議な体験でした。 VRやAIを題材としつつ、リアルな舞台のパワーを観た思いです。
後半、奇妙な生き物達が登場します。それは沢則行(さわ のりゆき)という方の人形でした。昨年、同じくNODA・MAPが主催した東京キャラバン2ndを観に行ったのですが、そこに登場していて、面白いなあ と思っていましたが、今回、演劇の舞台にも取り入れられたのですね。
俳優陣も素晴らしかったですね。セリフや身のこなし、皆、躍動していました。
やっぱり演劇の舞台にはリアルにしかない表現の力がありますね。
NODA・MAPの劇は今まで「パンドラの鐘」、「Q:A Night At The Kabuki」を観たことがありますが、どれも不思議な感覚の残る作品でした。これからも追っかけて観たいと思います。 チケットが取れることを祈って。
いい時間を過ごせたことに感謝!!
ではでは。