あいしろう blog IMAGINE

想像してみよう。それは何をもたらす? この後どうなる?   ときに楽しい夢を。ときには厳しい視点で。 

吉岡里帆 他 出演の劇「ガラスの動物園・消えなさいローラ」を観てきた。ちょっと悲しいお話。出演者の演技がよかった

 ちょっと前のことですが劇「ガラスの動物園・消えなさいローラ」を観ました。劇団3〇〇の渡辺えりの演出、出演は渡辺えり自身と、尾上松也吉岡里帆和田琢磨の4人。 演劇にそれ程詳しくない私は、生で吉岡里帆を観てみたいというちょっと不純な動機で観に行かせて頂きましたが、ちょっと悲しく、そして愛を感じるいい舞台でした。

 

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 「ガラスの動物園」は、テネシー・ウィリアムズ作の演劇界では有名な古典の戯曲ですが、私は題名は知ってはいたものの今回、初めて見ました。1930年代のアメリカの南部の都市で暮らす家庭での人々の葛藤を描いています。もう一本上演された「消えなさいローラ」は、「ガラスの動物園」のその後を描く、別役 実作の作品で、今回はその2本が通しで上演されました。「消えなさいローラ」は日にちによって出演者が異なりましたが、私の見た日は、尾上松也吉岡里帆の出演でした。

 

 

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 上演場所は、新宿の紀伊國ホール。子供のときから馴染みのある紀伊國屋書店ですが、ホールに入るのは今回が初めてです。 席数418とのことで、それほど大きくなく、演劇をじっくり鑑賞するにはいい劇場でした。

 

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 お話は母と姉と弟の二人の子供が暮らす3人家族の家を舞台に、 尾上松也演じる弟トムの語りをベースに進みます。 吉岡里帆演じる姉 ローラは、足が不自由なこともあり引っ込み思案で、学校にも通ってもうまく行かず家に引きごもりがち。渡辺えり演じる母 アマンダは、そんなローラのこの先の生活を案じ、どうにかローラにいい恋人ができないか気をもんでいます。弟 トムも姉を気遣っていますが、母アマンダとは意見が合わず、しばしば対立しています。 母アマンダは亡き夫の影をトムに見ているようです。

 

 ローラはガラスの動物の置物を収集し、「ガラスの動物園」と呼び大事にしています。またハイスクール時代に憧れた男性に恋心を抱いた思い出を今でも大事にしています。

 

 弟トムは、ローラの相手になれればと会社の友人ジムを食事に連れてきます。しかしそのジムこそ、ローラがハイスクール時代に恋心を抱いた相手でした。ローラはどうにかジムと話すことができ二人は会話を楽しみます。 ローラがガラスの動物園を紹介したときジムは誤って置物のユニコーンの角を折ってしまいます。これによりユニコーンは普通の馬になってしまいました。 こうやって交流する二人ですが、ジムには既に婚約者がいて二人は結ばれることはありませんでした。

 そんな悲しい結果の後、トムは母との仲も悪化し家を出、セントルイスの街を離れていってしまいます。

 ここまでが「ガラスの動物園」のあらすじです。

 

 そして「消えなさいローラ」は、その後日譚。ローラは前頭葉を取るロボトミー手術を受け、家も出ずに暮らし、弟トムが帰って来るのを待っています。そこへ葬儀屋を名乗る男性が訪ねてきます。ローラはときどき母アマンダのふりをして二人が生活しているように見せかけますが、実は母アマンダは既に死んでいて部屋の奥で屍となっているのでした。またトムは既に亡くなったと知らされます。 ひとりぼっちで生きていかなくてはならないローラがそこにはいました。

 

 まず吉岡里帆の演技はよかったですね。引っ込み思案だけど、感受性豊かな女性の気持ちの起伏が演技でよく表れていました。物悲しくも可愛く美しい女性、また足が不自由な方の動作の表現もよかったです。テレビドラマやCMで見せる役柄とも違って、幅の広い演技ができる方だなと感心しました。 もちろん他の渡辺えり尾上松也和田琢磨の演技もよかったです。

 

 「ガラスの動物園」は、渡辺えりが学生時代に観て影響を受けた、忘れえない1作だそうで、その気持ちのこもった舞台になっていたと思います。不況の時代のアメリカの、ちょっと不幸な家庭。そしてその中でも足が不自由で内向的な姉のローラ。「ガラスの動物園」はローラの夢想であり、角が折れたユニコーンや実らない恋は現実でした。そしてローラの取り巻く母と弟の不和。でも二人にはローラを見つめる愛もありました。それぞれの想いと人生がある、そんな家族です。これは作者 テネシー・ウィリアムズの自伝的作品だそうです。 心に沁みました。

 

 「ガラスの動物園」といえば、先日読んだ小川洋子著の短編集『掌に眠る舞台』の中の一遍「ユニコーンを握らせる」で題材になっていました。女学生がかつて女優だったという“ローラ伯母さん”の家に受験のために泊まりに行ったエピソードを綴った小説です。“ローラ伯母さん”は食器に「ガラスの動物園」のセリフを記していて、それを日々読み上げます。そして角の折れたユニコーンも登場します。感受性豊かな女学生が出会うと“ローラ叔母さん“の不思議な生活。いい小説でした。

 

 

 

いろいろいい作品がありますね。

 

劇「ガラスの動物園・消えなさいローラ」は山形公演、大阪公演もあるとのことです。

 

[山形公演]
2023年11月23日(木・祝)
やまぎん県民ホール

[大阪公演]
2023年11月25日(土)、26日(日)
松下IMPホール

 

ではでは。

 

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